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【残されたもの・いつか会えるもの】

【残されたもの・いつか会えるもの】

昨日、『育ての親』が逝った。

綺麗だけど普段から人形みたいにあまり表情の動かない顔だったけれど、まさか死に顔までそのままだとは思わなかった(というか、死ぬところなんか想像すら出来なかったのだけど)。少しの間、本当は寝てるだけなんじゃないかと九割方本気で疑ったくらい、いつも通りの顔だった。

そんな顔だったけれど、きっと先に逝ってしまった『育ての親の片割れ』が見れば、『穏やかだ』とか言ったに違いない。彼だけが唯一、あの無表情から本当に小さな変化を読み取れる人だったから。

だけど、『彼』は先に逝ってしまったから。

涼しげな、緑がかった青い瞳(ヒスイ色と言うのだと教えてくれたのは、もう片方の育ての親だ。)が綺麗で、優しかった『育ての親の片割れ』。どちらかというと、というか断然『彼』の方が好きだった。

拾われたのは(というか、気が付けば連れて来られていた。)、どこまでも強い紅い瞳を持った『あの人』だったのだけども『あの人』ときたら、拾った俺をそのまま『彼』に丸投げしやがったのだ。もちろん『彼』は『育てる気が無いのなら拾ってくるな』とその時は言った(それは俺も声を大にして言いたかったのだが、如何せんその時は物心つくかどうかの歳だった。)らしいのだが、結果はこの通り。本当に『彼』には感謝してもしきれない。まあ、拾ってくれた『あの人』にも一応は感謝しているが。

 今俺が立っているのは、『あの人』を埋めた傍に立つ木の前。その向こうには『彼』の骨を撒いた海が広がっている。『彼』は自分の体の一片たりともこの世に残すなと言ったから、『あの人』と一緒に焼いて砕いて海に撒いた。『あの人』は後に残った自分の亡骸についてなんて何も言わなかったから。だから、勝手に埋めた。一応気を利かせてやったんだから、褒めろよな。

墓標なんてない。この一本だけ生える木がその代わりだ。餞もない。絶対に必要ないって言うに決まっている。

拾ってくれたのは彼ら。生き方を教えてくれたのも彼ら。戦い方を教えてくれたのも彼ら。

今の『俺』を作る基盤となったのは、顔も覚えていない生みの親ではなく、間違いなく彼らだ。

それは俺の誇り。

手には布に包んだ二振りの刀。それが俺の今ある物。

「それじゃぁ、行ってきます。『    』たち」

生きてた間じゃ絶対に言わなかった呼び方。

さあ、どこに向かおうか。とりあえず、まずは彼らの生まれ育った国にでも行ってみようか。

その日、金色の髪と青い瞳の少年がどこかの街から旅立った。

                        END

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