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【〇/零】

【〇/零】

薄い灰青の髪と、血のような瞳の子どもは「まもの」と呼ばれていた。

生まれ落ちた瞬間から捨てられ「まもの」はどうして自分が生きているのかもわからず、混沌としたこの世界で息をしていた。

いつ死んでも仕方ない。「まもの」はそうやって生きながらえてきたのだから。

二つに分断された国「ニホン」が統治されても世界は変わることなく存在し続けた。CFC、日興連を抑えニホンを掌握した「ヴィスキオ」ヴィスキオの王である「イルレ」は統治ではなく、ただひたすらに侵略を続けた。それはニホンを離れ、世界であったり。また「ニホン」にうまれた人民すらも。第三次世界大戦後の混乱を引き継ぎ、イルレは「ニホン」に君臨し続ける。今も、なお。

「まもの」がそれを拾ったのはがれきの下だった。

滅多に拝めない太陽の光を浴びて何かが光るのが見えた。ほとんど原形をとどめていない、おそらく何かの建物だったであろうがれきの隙間からひかるそれを「魔物」は精いっぱい手を伸ばし、つかんだ。

少し刃は欠けてしまっていたが「まもの」がつかんだひかるそれは小ぶりのナイフだった。

武器はいい。奪い合うことが当たり前のニホン、その中心であるトシマにおいては「子どもだから」という例外は一切ない。生きている者同士が戦い、勝ち取ること。それが唯一のことだ。

そして、「まもの」のそれを狩るものも存在する。

「まもの」はナイフを持ち直し、近づいてくる気配に身構えた。

複数の足音は見知った「まもの」とほとんど年かさの変わらない集団で、狙うのは先ほど「まもの」が見つけたナイフに他ならない。 

低い姿勢をとり、「まもの」は彼らが向かってくるのを待ち構えた。

瞬間、気配は一斉に「まもの」へと飛び掛かる。

闇雲に振りまわすことしかできなかったけれど「まもの」の立つ傍らには血を流し、倒れ伏す少年たちがいた。彼らは傷を抑え、それでもまだ虎視眈々と「まもの」から目を離すことをせず、睨みつけていた。

だから「まもの」は長く伸びた前髪をかきあげ、彼らをぐるりと見回した。

赤い瞳で。

「まもの」は自分で勝ち取った勝利にしばし酔いしれていた。

それは「まもの」一瞬見せた隙だったのかもしれない。

そして、かれらは知っていた。もうひとつの大きな気配を。

まるでありったけの力を振り絞るように、彼らは「まもの」の体を持ち上げ、そして少し離れた道へ「まもの」を投げ捨てた。

「まもの」は一瞬何が起こったのか分からず、ただ握り締めて離さなかったナイフを構え、起き上がった。

そして、辺りを揺らすような怒号が「まもの」をも揺らした。

「まもの」の目の前にいたのは黒い兵の集団。それが何を意味しているのか「まもの」でも知っている。

彼らが守りかためているのはただ一人「ニホン」を握る王のみ。

ざわめきが消えないその中で「まもの」はナイフを握り締め、ぐるりと「まもの」を取り囲む兵たちを睨みつけた。奪い、奪われながら今まで生きてきたのだから「まもの」はそれ以外を知らない。

ナイフを振り上げ「まもの」が兵の一人へと向かった瞬間。黒い光が魔物の行く先を抑え、そのまま地面へと縫い付けた。

たった一瞬のことだったけれど、その一瞬で「まもの」の呼吸は奪われ、地面に無様に寝転がることしかできずにいた。

荒い息を吐き「まもの」は視線を彷徨わせた。

そして「まもの」の目の前に、見たこともない美しく光る刃が突き付けられた。

「ずいぶん命知らずと見えるな」

その声で、あたりにいた兵たちは一斉に引き。「まもの」は目の前に立つ黒い影と美しい刃が何かを知る。

「イルレ」と呼ばれる「ニホン」の王。

「まもの」を真っ直ぐに見るその瞳は「まもの」よりもずっと燃えるような赤だった。

Next……

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